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「銀座ルール」見直しで変わる銀座

ファッション、飲食の街からオフィス街に転換か?

2019/11/24 浅野夏紀

文/浅野夏紀

オフィス利用と商業利用の割合を逆転

銀座ルールで高さがそろえられる中央通り

全国で一番地価が高い商店街の東京都中央区の銀座中央通りなどは、「銀座ルール」という地区計画(地元住民と区が制定)がある。その建物用途使途(地区計画の一部)について地元の要望を踏まえて、早ければ2020年にも大幅に見直すことになった。
銀座地区では現在、「商業用途の床面積を1/2以上、事業所用途の床面積を1/3以下」とすることが、建物を建てる際の容積率緩和の条件だ。現実の規制より、大きい建物を建てるため、容積率のボーナスがあるが、ボーナスを引き出すための引換の条件が用途規制だ。今までは店舗など商業重視の規制だったのだが、そうではなくなるともいえる。

現在の誘導用途は1998年、「銀座ルール」と呼ばれる地区計画によって定められた。銀座ルールとは、銀座通り、晴海通り、西銀座通り、並木通り、みゆき通りなど各道路の幅ごとに建てられる建物の高さを56メートル、屋上工作物を含め66メートルとするものや、容積率の数値など銀座独自のルールが決められている。
いまや、それが銀座の発展の足かせになっているのか? 通販に押される物販や飲食に頼った商業重視の街づくりはもう「負け組」のレッテルなのか?
この新たなオフィス誘導策は2019年度内の「銀座まちづくり会議」を地元の商店会の「要望」を踏まえる形となる。
商業用途については現状の2分の1以上に義務づける項目を見直し、オフィス(用途)を現行の3分の1以下から2分の1以下まで引き上げる。商業は3分の1以上となる。
この銀座の都市政策モデルチェンジの裏には、飲食業種テナントの苦しい台所事情が影響しているのは間違いない。

競争力を失う「銀座」

変化を求められる銀座の街並

一億総グルメ時代と言われるが、銀座といえども、飲食業は低収益で入居期間が短く、ビルオーナーや投資家から歓迎されないのだ。
おりからの都心の再開発ラッシュで、同じような飲食店が林立している。10年前は「関東ではここだけ!」を売り物にしていた各地の有名ローカル店もいたるところに出店し、競合して競争力を失っている。地方でしか味わえない名店がすでに東京では珍しくなく、「ありきたり」となっているのだ。飲食業の従事者の時給は高くなく、長時間労働も嫌われ、スタッフ不足にも見舞われている。
では、輝いていた商業重視の黄金の銀座ルール改正の「本音」の部分はどこにあるのか? 銀座のあるビルオーナーに解説してもらうと下記のようになる。

(1)東急プラザ銀座など大型店も、飲食業テナントの不振、つまり「レストラン敗戦」が深刻になってきた。

(2)ギンザシックスのように内外の不動産投資を呼び込むには安定した収益のオフィス床がもっともっと必要だ。

(3)オフィス誘導で銀座にふさわしくない飲食・サービス店の出店抑制が期待できる。

(4)銀座の商店会が折れたのではない! 実は銀座の旦那衆から望んだオフィス重視策である。

(5)10年前の銀座シックスの構想段階当時から銀座はオーバーストアーという指摘があるので、実は「いまさら感」の指摘もある。

つまり、増えすぎた銀座の商業床について今後も制限が緩いと「銀座にふさわしくない店が増え、街の格式を落とす」という“心配”は銀座の変化を嫌う長老たちの意向だろう。それが本音か建て前かは問わないが、中央通りのファストファッションの大型ビルが増えている現状を快く思わない老舗の商店主もかなり増えているのだ。とくに、2008年のリーマンショック以降、「爆買い」した訪日客(インバウンド)の銀座襲来や家電やファストファッション店の出店ラッシュで銀座の客層が底流から変わっている現実がある。

 なお、銀座のビル所有者は自身が営む商業事業をビルに入れることで相続・税金対策も施してきた。その結果、どうしてもビルの構成が商業重視になりやすい側面があった。

地価高騰の裏で、現実はガタガタ

商業賃料は銀座中央通りの中心地の1階路面では、1坪当たり20万円前後の賃料が稼げる。ただし、それでも上層階は家賃が高くない。古いビルや裏通りなら、商業賃料はガタ落ちだ。

実際、裏通りの零細の古ビルの上層階でないと家賃を払う体力が乏しい飲食テナントは、家賃が安いうえに入居期間も短めだ。大型店の1フロアを借りた飲食店の撤退も珍しくはない。
旧東芝ビル跡地に出店した東急プラザ銀座も上層階の免税店が不振だが、飲食街も好調とは言いがたい状況だという。

顧客の銀座の(飲食・レジャーの)夜の滞在時間は短いという「夜の客の逃げ足が速い銀座」の構造問題も残されたままだ。
飲食以外でも、海外の新興ブランドは、高い家賃に絶えきれず撤退するケースが見受けられる。ビルオーナーは「銀座の商業テナントは、ビルを高値で買ってくれる投資家から見ても、賃料リスクがある」とみている。
それでなくても、銀座立地を支えてきたアパレルは、ネット通販に押されて店舗展開や販売戦略の見直しが進められている。

18年の衣類・服装雑貨の通販市場は1兆7730億円で、生活家電・AV機器、書籍・映像・音楽ソフトより大きい。大手のオンワードですら、2割にあたる600店の閉鎖を控える。銀座で商業ビル地を確保したオンワードはすでに関西の鉄道系企業に用地を泣く泣く売った。「ネット通販とリアル店舗を融合する」という戦略は美辞麗句だけで終わる場合が多いが、超一等地の銀座でも他人事ではない。レナウンや三陽商会も同様だ。

加えて通販できない、通販されない高級海外ブランドの新規誘致は曲がり角を迎えている。大型ブランドの集合店舗といえるギンザシックスの出現で、銀座に新規出店できるブランドは数少ない。

米・テファニーに買収を仕掛けるLVMHグループ(ルイ・ヴィトンなど70超の高級ブランドを所有)への一極依存ももう限界だ。国内の所得の二極化による高価なブランド消費の頭打ち化と中国など新興アジアの爆買い客の減少は、銀座に変化を迫っている。その一つが事務所誘致、銀座ルールの見直しなのだ。

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