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38年ぶりの相続大改正

時系列で見る改正のポイント

2019/11/22 住まいの大学

(文/住まいの大学編集部)

画像/123RF

「38年ぶりの大改正」として話題になった相続の民法改正。とはいえ、法律自体の施行そのものは一気に行われるのではなく、2019年に入って順次進められてきている。
相続改正はどのようなスケジュールで進められているのかまとめてみた。

●2019年1月13日施行

▽自筆証書遺言の方式緩和
改正前までは自筆証書遺言を書く場合は、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名のほか「財産目録」についても自筆で書かなくてはならかった。そのため写し間違いがあった場合は無効になることもあり、それが原因でトラブルになり、被相続人の意思に反してしまうこともあった。そこでこの実筆について緩和され、目録作成についてはパソコンでの作成、登記事項証明書や預金通帳の写しを添付することも認められるようになった。ただし、こうした目録を添付する場合は、財産目録の各頁に署名押印する必要がある。

●2019年7月1日施行

▽長期間結婚している夫婦間で行った居住用不動産の贈与等を保護
婚姻期間が20年以上である夫婦の場合、居住している土地・建物を配偶者に贈与しても、その分については相続の対象として計算しなくてもよくなった。この結果、配偶者はより多くの財産を相続できるようになり、老後の生活の不安を軽減できるようになった。

▽相続対象の預貯金の仮払い
これまで被相続人が亡くなると、生活費や葬儀費用の支払い、債務の支払などでも、遺産分割が確定するまでは預貯金を引き出すことができなかった。しかし、改正後は、相続開始時預貯金×3分の1×法定相続分を上限(1金融機関あたり150万円を上限)に引き出すことができるようになった。

▽遺産分割前に処分された財産の取り扱い
相続が発生すれば、とくに遺言状がなければ相続人は法定相続の率に応じて各々が遺産を相続できる。しかし、なかには相続が発生し遺産分割前に、使い込んでしまう相続人も出てくる。
たとえば、評価額3000万円の自宅と預貯金3000万円の相続財産を2人の子が相続するケースで、自宅3000万円は長男、預貯金3000万円は次男と相続すれは公平になる。しかし、長男が自宅を生前贈与され、預貯金の2000万を使い込んだという場合、次男が受け取れる金額はこれまでは残された預貯金1000万円と使い込んだ2000万円の2分の1の1000万円の合計2000円だけだった。しかし、今回の改正では生前贈与された自宅も合わせた合計6000万円の2分の1の3000万円を相続できるようになる。

▽遺留分制度の見直し
遺留分とは、亡くなった人の兄弟姉妹以外の相続人に法律上認められた相続できる最低限の財産こと。たとえば、妻と2人の子がいる人が遺言状で「すべての財産を長男に相続させる」としていても、妻は相続財産の4分の1、長男以外の子は法定相続分の2分の1(このケースでは8分の1)が遺留分が認められる。
遺留分の減殺請求ではすぐには現金化できない不動産などは共有名義とすることもあった。そこで今回の改正ではこうした不動産や株式など分割しずらいものについては、原則、金銭の支払いで決着を付けられるようになった。また、すぐに支払えなければ裁判所が支払い期限の猶予を認めることになった。

▽相続の効力に関する見直し
これまで相続における不動産登記は必ずしなければならないものではなく、遺言書などによって相続された財産については、登記等の対抗要件がなくても、その遺言書に書かれた分割率で第三者に対しても対抗することができた。しかし、これではその不動産の所有者が第三者にはわからない。そこで今回の改正ではこれを見直し、原則、不動産の登記を求め、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができなくなった。

▽相続人以外の特別寄与
これまでも亡くなった人の生前に、介護や身の回りの世話をした人に対して、亡くなった際の相続分を増やす「寄与分」というものはあった。しかし、こうした考えはあっても実際に寄与分を認めてもらうのは難しく、ほとんど使われることはなかった。さらに寄与分は親族に限られ、“嫁”がどんなに介護をしても相続とは切り離されていた。

そこでこの不公平を是正するため、今回の改正では被相続人の介護や日常の世話をした相続人ではない「親族」にも「特別寄与」として請求ができるようになった。この「相続人でない親族」とは6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族で、子の配偶者、孫の配偶者、ひ孫の配偶者、甥の配偶者までが対象。請求に関しては介護日誌や経費のレシートなどが必要で、相続が発生した段階で各相続人にして支払請求を行うことができる。金額などの協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求する。請求できるのは相続発生、相続人を知ったときから6か月、または相続開始から1年以内。ただし、相続人にはならないので、相続分割協議には参加できない。

●2020年4月1日

▽配偶者居住権の創設
今回の相続の改正で一番大きなポイントになったが、この配偶者の居住権の創設だ。これまでも判例で、相続後の短期的な居住権は認められてきたが、配偶者の生活保障という観点から創設されたのがこの「配偶者居住権」である。これは相続発生後、住んでいた自宅の土地建物の所有権は配偶者以外の相続人に移っても、被相続人の配偶者は終生、無償で住んでいた自宅に住み続けられるという権利である。

具体的な事例として、残された財産は評価額2000万円の自宅不動産、預貯金2000万円の合計4000万円を配偶者と子の2人が法定相続したケースでは、これまで配偶者が住み慣れた家(2000万円)を相続し、残りの現金2000万円は子が相続するというのがよくある遺産分割のパターンだった。しかし、これでは配偶者には現金の相続がなく、一人になってからの生活への不安が残る。
そこで改正によって配偶者の「居住権」を認め、自宅評価額の2000万円から配偶者は家の「居住権」の評価額を500万円として相続。残り1500万円分を「所有権」として子が相続。預貯金の2000万円については、配偶者が1500万円、子が500万円相続する。これで配偶者の手元に自宅と現金が残り、住むところと現金が確保される。

●2020年7月10日

自筆遺言証書の法務局での保管
自筆遺言証書は自分自身で作成するため、誰にでも書くことができる。そのため書いたあとに紛失したり、改ざん、隠ぺいされることも考えられる。そこでこの遺言を法務局に保管してもらい、その存在があることを家族に伝えておけば、こうした問題は防ぐことが可能で、20年の7月からはそれが可能になる。ただし、法務局は、単に遺言書を保管しているだけでは内容について保証しているわけではない。

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