連載・トピックス / 不動産投資

タワマンは15年で売りなさい――その根拠は

ITとAI技術で住宅ノマドの可能性

2020/03/16 浅野夏紀

文/浅野夏紀

災害に強いとみられたタワマンの足下にある危機

画像/123RF

相続税節税対策投資などとしても脚光を浴びていたタワーマンション(タワマン)。中古相場も住宅ローン控除期間が10年程度あることから、年収2倍の共稼ぎパワーカップル、外国人、相続税対策の富裕層などに人気で、中古相場も値崩れしてこなかった。

タワマンが都心で本格的に建設され始めたのは2000年前後で、古い物件は築後20年を迎えつつある。

しかし、昨年の台風で川崎市の武蔵小杉の高級物件が水浸しになり、耐震性など地震や災害に強いとみられていたタワマンが水害に弱くという意外な弱点が明らかになり、タワマンに対する信頼性や資産価値に疑問が出てきたようだ。

タワマンについては、本格的な建設がはじまって20年を迎えることから、昨年あたりから大規模修繕費の積立額を上回るような設備更新費という住民の想定外の負担が明るみに出はじめ、こうした問題を指摘する報道もされていた。

実際、タワマンの設備は、ほぼ特注に近い大型設備が数多く使われている。

たとえば、エレベーターのような基幹設備であってもメーカーによる交換部品の供給は、これまでもおおよそ20年で停止してきた。そうなれば最悪の場合はエレベーターの付け替えが必要なってくる。

住民のほとんどはそうした現実を知らされていない。もちろん、これから新たに新築、中古を買う消費者に対してもこのことは、伝えられていないのではないだろうか。

これまで長期修繕を無事に終えたタワマンは、全国でも数えるほどしかない。そうした物件でも長期修繕費の積立金、および、トータルの積み立て累計額が十分とはいない物件もあったようで、こうした修繕工事をめぐった問題はネットなどでも指摘されはじめている。

タワマン問題噴出は、これからが本番?

建築後、20年目を迎えたタワマンが次々本格的な長期修繕工事を迎える物件が出てくる状況にあっても、中古タワマン価格にはこのことが読み込まれていない。そのため中古のタワマン価格はいまも高値を維持している。こうした事実が周知されれば、建築後10年~20年のタワマンの相場は下がってしまうものもあるはずだ。

いまなおこうした「不都合な真実」を知るのは、施工したゼネコンや販売した不動産会社(デベロッパー)だけ。だれもあえては口にしない。

タワマンに限らず、マンションの修繕積立金はなるべく低めに弾くのが業界の悪しき習慣。タワマンは解体や建て替えされたトラックレコード(履歴)がない。加えて、築後15年~20年目までの大規模修繕の履歴(総費用)などの実例も数少ないため、中古のタワマンを売る側も買う側もそうした点を、中古価格にどう反映すればよい明確な基準はないようだ。

タワマンに限らず、マンションは中古であってもおおむね10年前後は住宅ローン減税があることが多い。そのことや建物の減価償却の関係から築後10~20年目あたりを境に相場が下がる。しかし、人気のタワマンの価格は土地の希少性もあり、値上がりか、ほぼ横ばいの物件が少なくない。そのことや建物の減価償却の関係から築後10~20年目あたりを境に相場が下がる。

だが、15年~20年の間に行われる大規模修繕工事で大きな費用がかかり、工事後多くの管理組合では、修繕費を使い切ってしまうのが現実だ。しかし、日本ではタワマンに限らず、通常のマンションでも、建物の傷み具合や施設、管理組合の修繕積立金の財務データなどが第三者(買い手側)に十分に開示され、ガラス張りにされる例はまれだ。

このことが「タワマンは築後15年で売りなさい」という根拠になっている。

最近でこそ、修繕の必要性やその財政も含めてマンションが格付けされる動きが出てきたが、進んで格付けされている物件はそれこそ「自信」のある物件ともいえ、それだけで優良物件といえるのかもしれない。

日本でもトレーラーハウスが? 技術革新で住宅のノマド化

昭和・平成までのファミリーモデルというのは夫婦2人と子ども2人の4人世帯だった。しかし、少子化・非婚化が進み、このファミリーモデルも変わってきた。世帯あたりの人数は減っており、「広い住宅でなくてもよい」という人はこれからも増えていく。そこで郊外から職住接近へと変わり、都心回帰の流れがでてきた。

こうした居住する場について考えた場合、さらに進めると「家が動く」という考え方に行き着く。いわば通勤にも便利なキャンピングカーである。

もともと地価の非常に高い都心に多くの人が住める集合住宅のかたちとしてタワー化させることはやむを得ない。共稼ぎのパワーカップルであれば、郊外より値段が2倍前後も高いタワマンでもいいだろう。もっといえば郊外から都心に「回帰」した層にとっては、不動産に「足」さえはえていれば、将来はわざわざ売買せずに、家ごとどこにでも引っ越すことが可能だ。

可動式住宅といえば、トレーラーハウスが、国土の広い米国では普及している。トレーラーハウスに住む人たちは、仕事(食)のあるエリアに住宅ごと移りながら生活する。かつて、日本にも河川や海岸に係留させた船に住む習慣は一部にあった。

長足のIT技術、AI技術が進歩すれば、毎日通勤する必要もなく、近場のキャンピング場や広場に、トイレやお風呂を備えた「移動住宅」の需要を満たすために「ニューニュータウン」ができる時代も遠くはないのではないか。固定資産税や住民票をどうするといった課題はあるが、これも大きな問題にならない。

仕事ややりたいことに合わせて住まいごと移動する新しいノマド(否定住民)の時代は、意外と早く来るのではないか。富裕層以外は、もうタワマンが不要になる時代が来るのかもしれない。

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