住まいのノウハウ講義 / 売る / 売却の基礎知識

一歩間違えれば人生設計が狂う可能性も

なぜ「住み替え」時の売却はむずかしいのか

2016/01/04 高橋正典

「子どもが生まれた」「親と同居する」などの家庭事情や、「もっと会社に近い場所がいい」などの理由により住み替えを検討している方も多いと思いますが、この住み替えによる売却、実はなかなか難しいものなのです。

買うのが先か、売るのが先か

「いまの家を売って新しい家を買うだけなのに、どこがむずかしいの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、多くの場合は現在の家の住宅ローンもあり、新たな家の住宅ローンも組むことになることから、資金計画の立て方が非常にむずかしくなるのです。

 一時的にふたつのローンを同時進行していくことは不可能ではないですが、毎月の返済額が大きくなり、いったん同時にふたつのローンを金融機関から借りるために相応の年収も必要になります。金融機関によっては、現在のローン残債があっても売却予定であることを考慮したローンを組めますが、金利条件がよいとは限りません。

 つまり、現在の家を売却して住宅ローンを整理した後、に住み替え先の新しい住宅ローンを組み直すか、2つのローンを同時に返済していくかが現実的です。しかし、家の「売り」「買い」を同時に進めていくと、買いたい家が先に見つかってしまったために急いでいまの家を売りに出し妥協した価格で売ってしまう(買い取り業者による相場より大幅に低い金額による下取りを含む)ということが多いのです。

 このように、新居探しを優先してしまうと、いまの家の売却価格が相当下がってしまう可能性が高くなってしまうのです。

「売り」を妥協しないとどうなるのか

 それでは、逆にいまの家の売却を妥協することなく、売却が決まり次第新居を探すとどのようなことが起こるのでしょうか?

 一般的に、売買契約をしてから自宅を引き渡すまでには長くても3カ月の猶予しかありません。いまの家が売れたらすぐに新しい家を探し、引っ越しできる態勢を整えなければなりません。

 新居を買いたいエリアに物件が豊富にあればそんなに困らないのですが、物件が少ないエリアですと新居がすぐに見つからない場合も多く、売却した家の引き渡しまでに間に合わず一時的に賃貸など仮住まいを確保しなければならない事態も考えられます。

 このように、「売り」も「買い」も妥協せず一挙両得を狙うのは非常にむずかしいことなのです。そこで、最初から仮住まいを用意し、いまの家を内覧しやすくすることで内覧希望者に好印象を持ってもらうという方法もあります。

 しかしこの方法ですと、仮住まいを確保する経費や引っ越し代などで100万円近い出費が発生してしまいます。不動産仲介業者に買い叩きをされるよりはマシだとは思いますので、「売り」を優先することでいまの家が高い価格で売れる可能性があるのかを吟味する必要があります。

新しく組む住宅ローンにも注意を

 住み替えのときに気をつけたいのが、新しく組む住宅ローンの返済期間です。

 住み替え時点で30歳の人であれば、35年の住宅ローンを組むことができますし、現在の低金利もあり希望額の融資を受けられる可能性が高いです。しかし、住み替え時点で40歳の人であれば、そこから35年のローンを組むのは危険です。制度上は、45歳未満であれば35年ローンを組むことができますが、そうなると80歳まで返済が続くことになります。

 このような観点からも、ゆとりある老後生活を送るためにも、65歳までに返済を終わらせる返済期間を設定することが重要です。この時、子育て用に購入した広い一戸建てを売却し、コンパクトな家への住み替えを行なう場合は資金面での注意が必要になります。

 郊外にある一戸建てが思ったよりも安い価格でしか売れず、駅近のマンションを買おうと思っても資金が足りないということが考えられます。金融機関の住宅ローンは、70歳までに申し込むことが基準にはなっていますが、年金生活者に融資してくれる金融機関はほとんどないのが実情です(「フラット35」は除く)。

 したがって、いまの家がどれくらいの価格で売れるのかが大きなカギになります。「買い」先行で「売り」を妥協すると老後の人生設計が狂いかねません。ですので、結果的には仮住まいになる可能性もあるかもしれませんが、いまの家をできる限り高い価格で売却することに注力してみてはいかがでしょうか?

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