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視点、発想を変えることで広がる可能性

移住・二地域居住に備えて、働き方を見直そう

2016/01/04 馬場未織

どこにいても仕事ができること。これが移住・二地域居住を成功させる条件です。

勤め人のまま始められる二地域居住

 移住や二地域居住を考えるとき、いちばんのネックは仕事です。いきなり今の仕事を辞めるのは資金面でもリスクが高すぎますが、一方でフルタイムの仕事があっては、なかなか移住の準備に踏み出せないかもしれません。どこにいても仕事ができるスタイルに近づくため、何から始めればいいのでしょうか。

 勤め人でも週末だけの田舎暮らしなら、滞在先さえ見つかれば、とりあえずの二地域居住は始められます。ただし、土日だけでは毎週末に1泊旅行に出ているようで、少々慌ただしいのも事実。せめてもう1日、田舎で過ごす日があると、一気に二地域居住っぽさが増します。

 そうはいっても、毎週有給休暇を消化できる悠長な職場は少ないはずです。ほかに使える制度や仕組みがないかを確認してみましょう。いちばんいいのは在宅勤務制度です。周りに使っている人がいなくても人事部などに確認してみるといいでしょう。制度はあるけれど、単に運用されていないこともあり得ます。日本企業ではまだ多数派ではないとはいえ、ICTの進化で在宅勤務のインフラは格段に進歩しています。

 たとえば超大手のトヨタ自動車も、在宅勤務できる社員の対象を広げようと検討を始めたと報じられています。現在は子育てをしている社員を対象とした支援制度ですが、子育て中ではない社員にも広げ、週1日、2時間だけ出社すれば、それ以外は時間や場所に縛られない柔軟な働き方を認める方向で検討しているとのこと。リクルートホールディングス(HD、東京)でも先ごろ、上限日数の定めのない「リモートワーク」を導入しました。全社員約2000人を対象とする大規模な取り組みです。

ノマドワークに挑戦

 在宅勤務制度を活用できるようになっても、初めのうちは仕事のペースがつかめずに戸惑うことも多いかもしれません。いざ仕事をしようと思っても、必要な書類が職場にしかないことに気づいたり、ちょっと上司や同僚に確認したいことが出てきた場合、メールやチャットで呼びかけても、相手がすぐにつかまるとは限りません。細かいことを言い出せば、いつも職場で使っている備品が家にはなくて、不便を感じることもあるでしょう。

 自宅から社内のPC環境へアクセスする際のセキュリティなど、組織として対応してもらわなくてはいけない部分もありますが、それ以外に個々人の裁量に任せられている範囲では、「必要な物が手元にない」状態を避ける工夫が必要です。進行中もしくは使用頻度の高いファイルはオンラインストレージを活用して、いつでもアクセスできるようにするのが便利。二地域居住で働く上では、さまざまなクラウド機能を使いこなすスキルが必須です。

 「在宅」勤務に慣れてきたら、今度は家の外に飛び出し、仕事のしやすい環境がどこにあるのか探してみましょう。スターバックスに代表されるようなカフェなら、週末でもPCを開いて黙々と作業をしている人も多く、仕事をしていても違和感はありません。逆に、「昔ながらの喫茶店」といった佇まいの店では、パタパタとキーボードをたたいているのは歓迎されません。

 コワーキングスペースやシェアオフィスに行ってみるのもいいでしょう。月極の会員になっていなくてもドロップイン(一時利用)できるところも多いので、いろいろ試してみると、自分がどういう環境なら仕事がはかどるのかを知るきっかけになります。

問われているのは自己マネジメントのスキル

 長らく会社勤めをしている人が、在宅勤務をして最初に気づくのは、公私の区別がたいへん!ということ。上司や同僚など他者の視線がないところで、気を緩めずに高いパフォーマンスを発揮し続けるには鉄の意志が必要です。自分を律することの難しさを思い知るかもしれません。

 会社に行かなくてはいけないという制約から脱出できても、肝心の仕事がうまく進められなければ、在宅勤務などできません。大切なのは「時給」の発想をなくすことです。会社に「いる」だけで給料がもらえるのではなく、どれだけの仕事を「する」のか、その成果で対価を得る感覚を養う必要があります。大きな組織に「雇用される」のではなく、自ら「仕事を生む」というマインドセットの転換が、実は二地域・多地域居住には欠かせません。

 ムリに公私の区別をつけるより、むしろ「オン」と「オフ」の垣根をなくし、これまでの仕事に新しい発想を持ち込めるようになると、また新たな仕事を呼び込めるようになります。場所を選ばない自由な働き方こそが田舎と都会の両方を楽しむ力につながります。

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