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失敗しない物件選びの基礎知識(7)

「事務所・店舗」は不動産投資初心者にはむずかしい

枦山 剛枦山 剛

2016/02/24

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経験者が優遇されるプロパーローンを使う「事務所・店舗」

「事務所・店舗」とはいってもさまざまな形態があります。オフィスビル一棟、商業施設ビル一棟、区分オフィス・店舗などがありますが、共通しているのはオーダーメイド型のプロパーローンが適用になることです。このローンでは、金融機関の審査において不動産投資の実績が大きく影響するので、基本的に不動産投資の初心者には向かない投資となります。

初心者にはあまり向かないといえる理由がもうひとつあります。それがテナント料の交渉です。一般の賃貸物件と違い、テナントの賃料は大幅な金額交渉が行なわれることが普通です。新しい入居者はもちろんですが、オーナーチェンジの際にはもともといる入居者による大幅な家賃の値下げ・大規模修繕の要求は当たり前のように行なわれます。

また、ビルに投資する場合には賃貸住宅以上に需要・立地に気をつけなければいけません。通り1本違うだけで、その価値が大きく変わってしまうのです。ここで重要なのは、通りからの視認性。住宅では求められないこの視認性が、オフィス・店舗物件の投資にとって一番特別な点だと思います。

駅からのアクセスはもちろん、共用設備の充実も大事です。それに視認性が加わります。せっかくふたつの条件を整えたとしても、大きな通りに面していないというだけで価値が変わってくるのです。価値が変わるということは、賃料交渉にとって不利な要素が増えているということです。

このように住宅と比べ考慮すべき点が多いことから、事務所・店舗は初心者にはおすすめできない投資物件となっています。

「本当に利益になるのか」を検討すべき新規物件

つぎに紹介するのが、完全新規物件、つまり、更地にマンションやアパートを建てるところからスタートする物件です。

思い通りの建物をつくることができる半面、建築コストが大きくなってしまうため、「本当に利益が出るのか」というコスト計算をしっかりしないといけません。またもともと土地を持っているかいないかでも、投資の効率が大きく変わってきます。もちろん土地から購入するとなると、さらにコストは増加します。同規模の中古物件を購入するよりも時間もお金もかかるので、初心者には向かない物件です。

いざ建物を建て始めたとしても、当たり前の話ですが完成するまでは賃料収入は入ってきません。そこで最近では、「建築・解体費用を考えると新規の物件は高すぎる」という評価が一般的になってきました。

というのも、現在は建築にかかる人件費コストが大きくなっています。これは、東日本大震災の復興費用や2020年に開催される東京オリンピックの影響で労働力の供給不足という問題が発生しているからです。この職人不足が、そのまま建築費にダイレクトに影響しているのです。

確かに新規物件は希望のコンセプトをそのまま表現できますが、あまりに度が過ぎるとそれは単なる自己満足の世界です。しかも、こだわりが強すぎるとコストは膨らむ一方ですし、利回りの低さは新築物件と同様です。

ただし、ニッチ需要をつかむという感が方もあります。不動産経営の基本は需要と供給のバランスです。つまり、需要があるが供給の少ない品薄状態の不動産を市場に供給すれば、おのずと価値も利回りも高くなり、高い利益を確保できます。既存の不動産ではあまりニッチな建築はしない傾向なので、確実なニッチ需要をつかむことができれば面白い投資になるでしょう。

このように、「事務所・店舗」や「完全新規物件」はある程度投資の経験を積み、豊富な資金があるのであれば手を出してみるのもいいかもしれませんが、初めての不動産投資では避けたほうが賢明な物件です。まずは、基本的な不動産投資で損失が出ないような運営ができるようになってから、大規模な投資、またはオリジナリティのある不動産投資に挑戦してみましょう。

 

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この記事を書いた人

中学卒業後に大工、建設業、鉄工業などを経て、97年、若干23歳の時に鉄工業で創業する。大手ゼネコン5次下請けからスタートし、最終的には総合建設業者として大手ゼネコン5社の内2社、準大手ゼネコン5社、財閥系商社、建材メーカー、設計事務所、他数百を超える顧客と直取引するまでになり職人100人前後を抱える。同じころ飲食店、建設業専門経営コンサルタント業などを行なう関連会社3社も経営し、事業の多角化を行なう。 その間、約24年で多くの大型開発工事、投資用マンションとアパート建築、高層ビル建設、公共施設工事、メーカーの建材開発に携わり新施工法や新製品の商品化に貢献し徹底した品質管理と原価構造を学ぶ。しかし、拡大路線が裏目に出て廃業に至る。これを契機に経営者としての人生を徹底的に見つめ直し、顧客と社員と自身の相互利益を探求し学ぶ。 その後、不動産コンサルティングの業務に魅了され転身。 業界の活性化や顧客満足度の向上を阻む建設業界や不動産業界の古い慣習と収益構造に疑問を持ち、既成概念にとらわれない顧客サービスを模索し経営方針を固める。 現在、「経済活動を通し社会の不満、不便、不安を解消する」を経営方針に掲げ、顧客と企業の相互利益がかなうビジネスモデルを手掛け、建設と不動産に関わるすべての業界に変革を呼びかける。 (保有資格) 不動産系 1. 宅地建物取引士 2. 管理業務主任者 不動産コンサル系 1. 不動産コンサルティングマスター (合格後未登録) 2. 住宅建築コーディネーター 3.賃貸不動産経営管理士 4. 既存住宅アドバイザー 建築系 1. 一級建築施工管理技士 2. 監理技術者資格者証 3. 監理技術者講習修了証 4. 建築物石綿含有建材調査者 5. 特殊建築物調査資格者 6 マンション健康診断技術者 7. ブロック塀診断士 8. 建築仕上診断技術者 金融系 1. 貸金業取扱主任者 2. 住宅ローンアドバイザー ほか、損害保険募集人資格4種保有 その他 1. 相続診断士 2. 上級個人情報保護士 ほか、労働安全衛生法による資格16種保有

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