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いまさら聞けない融資と資金の基本(5/11)

不動産投資のローンはどれくらい金額まで借りてもいいのか

赤石崇士赤石崇士

2016/02/24

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住宅ローンがあると融資は不利になる?

いくらまで借りていいかを考える前に、まずほかのローンとの兼ね合いを考えてみましょう。住宅ローンのような大きなローンがあると、不動産投資用のローンの審査において不利に働くことは、ゼロではありません。

一般的に金融機関は、「総借入額が本業の収入の○倍まで」という、借り入れの総額の枠を規定しています。

たとえば、年収が1000万円だとして、すでに3000万円の住宅ローンを組んでいるとします。そのローンを組んでいる金融機関の借り入れ総額の枠が年収の10倍だとすると、最大借入額は1億円となり、残り7000万円までしか融資ができないことになります。

こうした「年収の○倍まで」という枠で判断する金融機関もあれば、「資産と負債のバランス」を見て融資の可否を見きわめている金融機関もあります。一般的な地方銀行や信用金庫では、こうした方法を採っているところが多いようです。

たとえば、住宅ローンを組んで、すでに自宅を購入している人のケースを考えてみましょう。自宅の評価額が2000万円で、すでにローンの返済が1000万円分終わっていたとしたら、2000万円の資産に対してローンは1000万円となります。この場合、1000万円の資産余力があると判断されるのです。

このように、「資産と負債のバランス」で融資の可否を判断する金融機関では、年収が低くても不動産の評価額が高いと、年収の何倍もの融資が可能になる場合があります。

ローンは借りるだけ借りたほうがいい?

不動産投資の初心者の方には「現金で購入して運用する」ということを基本的にはおすすめしますが、金融機関が貸してくれるというのであれば、借りられるだけ借りるというのも一理あります。

というのも、「金融機関のお金で収入を増やせる」「額が大きければ大きいほどレバレッジを利かせた投資ができる」からです。とはいえ、当然ながら多く借りれば借りただけ返済額も増えるので、きちんと返済していけそうか検証する必要があります。そこで、各種指標を活用したシミュレーションを行ない、物件の収益力に見合った融資を最大限活用することをおすすめします。

ここで使う指標はふたつです。

(1)借入償還余裕率(DCR/Debc Coverage Ratio)
これは「純営業収益(NOI/Net Operating Income)÷年間元利金返済額(ADS/Annual Debt Service)」で求めます。純営業収益は、家賃収入からさまざまな経費(金利は含まれないことに注意してください)を差し引いた後の利益のことです。年間元利金返済額は、文字通り、元金+利息の1年間の返済額のことです。DSCRと表現されることもあります。

これが大きいほど借り入れ返済の確実性が高く、返済できなくなる可能性は低いといえます。最低でも1.2以上、できれば1.5が目安とされています。

(2) 損益分岐入居率(BER/Break Even Ratio)
これは「{運営費(OPEX/Operating Expense)+年間元利金返済額(ADS)}÷潜在総収入(GPI/Gross Potential Income)」で求めます。

運営費は、物件の運営管理にかかる費用や、固定資産税・都市計画税、損害保険料などのいわゆるランニングコストの合計です。ローン利息と減価償却費は含みません。潜在総収入は、その物件に空室・滞納による収入のロスがまったくないと仮定したときの年間の賃料収入総額(満室時賃料)で、その物件が1年間で稼ぐことができる収入の限界値を表します。

損益分岐入居利率は、運営費と年間元利金返済額の合計を賄うためには、空室率をどこまで許容できるかを判断するための指標です。70パーセント以下が目安とされていて、80パーセントを超えると要注意、90パーセントを超えると少しの空室でピンチの状態を迎える可能性があります。これらの数値はひとつの目安です。投資家としてどの程度リスクを許容できるか勘案した上で判断する必要があります。

ここで大切になるのが、融資の返済期間です。返済期間が短ければ短いほど、毎月の返済額が大きくなりキャッシュフローの流れに大きく影響してきます。すなわち、できるだけ返済期間を長くしたほうが、キャッシュフローは安定するということです。

ローン返済の安全性を考慮し、無理のない不動産投資を心掛けましょう。

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この記事を書いた人

公認会計士、税理士

1994年、大阪大学経済学部卒業後、東証1部上場の印刷会社に入社、営業部、経理部に所属。2004年に公認会計士2次試験合格後、監査法人および併設税理士事務所に勤務。09年9月に赤石会計事務所を開業。宅地建物取引士(試験合格)の知識や資産税の知識等を活かし、不動産関連の顧客を多数有する。 近畿税理士会下京支部研修委員を務めるほか、講演、研修も多数行なっている。

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