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住宅取得資金の贈与を賢く受ける方法(1/6)

安易に贈与を受けると贈与税が課税される

土屋裕昭土屋裕昭

2016/01/31

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親子間の借り入れは「贈与」になる?

 子がマイホームを購入するときに、何とかしてあげたいと思うのが親心。コツコツ貯めてきたお金をこの機会に使ってもらおう、と考えることは自然なことです。そこで、親が子に1000万円の資金援助を申し出ました。

 このとき、借用書や公正証書を作成しておけば、税務署は見逃してくれると思っている人も多いようですが、税務署が一番知りたいのは「実態」なのです。つまり、形式ではなく真実です。

 形だけの借用書・公正証書を作成しても、子が親に返済する意思がない(もしくは返済している実態がない)と、実態は「親からの贈与」と判断され、贈与税の課税対象になってしまいます。逆に、ちゃんと返済していくのであれば、借用書がなかったとしても問題ありません。とはいえ、税務署とのトラブルを避けるためには、借用書を作成し定期的に親の通帳に振り込むことで実態を証明したほうがよいでしょう。

 ここで注意しなければいけないのは、いくら子が「返済する」と言ったとしても、返済ができるだけの収入がない場合は贈与と判断され課税対象になることをお忘れなく。

税務署から送られてくる書類とは?

 不動産を購入すると、多くの場合税務署から「お買いになった資産の購入価額などについてのお尋ね」という書類が郵送されてきます。

 この書類のなかには、不動産を取得するにあたってどのように資金を調達したかを記載する箇所があります。ここで親から資金援助をしてもらった場合には、「親からの贈与」もしくは「親からの借り入れ」と記入することになるのですが、前者の場合は当然ながら贈与税の申告・納付が必要になります。後者の場合は、本当に返済の事実があるかどうか税務署がチェックすることになります。

住宅取得等資金の贈与の特例について

 このように、親子間の資金のやり取りは贈与と判断される場合があるのですが、贈与税にも特例があります。それが、住宅取得等資金の贈与の特例です。

 その種類にはふたつあり、ひとつが一般贈与(暦年課税)の「住宅取得等資金の贈与税の非課税」で、もうひとつが相続時精算課税制度の「住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例」です。ここでは前者の住宅取得等資金の贈与税の非課税について紹介します。

 住宅取得等資金の贈与税の非課税とは、その年の1月1日において20歳以上の人が、親・祖父母などの直系尊属(配偶者の親は該当せず)から住宅の取得・増改築の資金を贈与された場合、一定の条件を満たすことで一定額を非課税とするものです。

 住宅取得の契約時期と非課税限度額が細かく設定されているため、どれだけの金額が非課税になるかは下記を参考にしてください。ちなみにこの数字は、消費税が8パーセントと想定されていて、将来的に消費税が10パーセントに上がるときには変更になります。

(1)省エネ・耐震住宅の場合
契約時期が2017年9月まで…1200万円まで非課税
契約時期が2017年10月から2018年9月まで…1000万円まで非課税
契約時期が2018年10月から2019年6月まで…800万円まで非課税

(2)一般住宅の場合
契約時期が2017年9月まで…700万円まで非課税
契約時期が2017年10月から2018年9月まで…500万円まで非課税
契約時期が2018年10月から2019年6月まで…300万円まで非課税

 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例については、別項で紹介します。

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この記事を書いた人

税理士

CFP、宅地建物取引士 米国アラスカ出身。一般企業勤務を経て簿記知識ゼロから3年で税理士試験合格。著書に「いちばんわかりやすい確定申告の書き方」(ダイヤモンド社)など多数。HP「相続税申告のツチヤ」にはお客様の声50件超掲載。

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