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中古住宅を買うときの基礎知識(3)

中古住宅の物件見学から購入までの流れは?

菅 正秀菅 正秀

2016/01/04

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さまざまな物件を見学してみる

 気になる物件が見つかったら、不動産会社を通じて見学を申し込みます。担当者には、前もって自分の希望や状況を正確に伝えておくことで、より適切な物件を紹介してもらえます。特に探し始めのころは、相場観や物件を見る目を養うためにも、さまざまな物件を見学してみることが大切です。「価格帯や築年数によってどんな違いがあるのか」「専有面積と実際に感じた広さ」など、判断基準となるものが見えてきます。

 ただし、一度に多数の物件を見学するのは控えましょう。なぜなら、各物件の特徴やよさ、マイナス点などを記憶・整理するのがむずかしくなるからです。一回に見学するのは3物件程度にするのがよいでしょう。

 また、不動産会社の担当者と実際に物件を前に話をすれば、物件への希望をより具体的に知らせることができます。担当者はあなたとの会話を通して、どんな物件を紹介していけばよいか理解してくれるでしょう。

 なお見学にあたっては、申し込みのあった順や見学順に契約の優先権が発生することが多いので、早く申し込んだほうが有利になります。また、大切なのは同行する不動産会社の担当者や現場で立ち会う売り主と信頼関係を築くこと。売る・売らないの判断をするのは売り主です。そのことを念頭に置いてマナーを守りつつ、希望通りの物件かどうかを確認しましょう。

購入の申し込み、契約条件の調整

 物件をいくつか見学し、納得のうえ購入したい物件が決まったら、不動産会社に「購入申込書」を提出します。不動産会社はこの申込書を売主に提示し、契約交渉が始まります。希望条件に合っているか、問題点はないか、ここまでに再度確認しておきましょう。

 迷いを残したままだったり、購入を焦ったり、売り主や不動産会社任せに判を捺さないことが重要です。後悔やトラブルのないよう十分納得したうえで契約を進めるようにしましょう。気になっている点は不動産会社の担当者に遠慮なく尋ねてもらうこと。建物や設備だけでなく、「隣家のピアノ教室の音は漏れてこないか」など、生活環境面の確認も大切です。

 購入の申し込み時には「申込証拠金」を求められることもありますが、これは購入意志の確認と申し込みの優先順位を確保するもので、相場は5万〜20万円。最終的には物件の購入費用に充当され、仮に契約に至らなかった際は原則返還されます。

 おおよその合意に達したところで、不動産会社の宅地建物取引士(有資格者:宅地建物取引業法(以下「法」という。)の一部が改正され、平成27年4月1日から「宅地建物取引主任者」が「宅地建物取引士」に、に変更となりました。http://www.retio.or.jp/exam/exam01.html)が買主に対し、権利関係や万が一契約を解除する場合の規定などの「重要事項」や「付帯設備」についての説明も行ないます。

 これは、現況のガスレンジやエアコンなどの設備も売買対象に含まれるのか、またそれらの損傷や汚れ具合などを確認するものです。入居してから困らないように明確にしておきましょう。契約内容に合意できれば、いよいよ「不動産売買契約」を結ぶことになります。

契約および住宅ローンの申し込み

 前述のように不動産売買契約を結ぶ際、不動産会社は買い主に対して、「取引物件」や「取引条件」について、重要事項説明が義務づけられています。契約当日に行なわれるのが一般的ですが、記載内容が多く、その場ですべて理解するのは困難です。事前にコピーを入手し、内容を理解してから契約にのぞむようにしましょう。

 また不動産売買契約時には、「手付金」が必要です。いわゆる頭金で契約成立の証拠となります。物件価格の10〜20パーセントが一般的ですが、手持ち金額が不足する場合は、売り主・不動産会社に相談してみましょう。通常は仲介手数料の半金を不動産会社に支払います。ただし、話し合いでローンの融資実行後の支払いにすることも可能です。仲介手数料の上限は、「消費税を除く物件価格×3.24パーセント+6万4800円」です。

 物件の売買契約を結ぶと、正式に住宅ローンを申し込みます。申し込みを受けた金融機関は申込者の審査を行ない、融資の可否・融資金額などを決定します。審査には最短で2週間ほどかかりますが、売買契約後に、融資許可が下りずに購入を断念するケースも出てきます。

 民間の金融機関のローンでは、こうした事態を避けるため、買う意思を固めた段階で、不動産会社などを通して予備審査を受け、審査の見通しを判断してもらいます。ただし不動産会社に任せにしていると、審査先の金融機関はその会社とつきあいの深いところになるのが普通です。

 住宅ローン商品は種類も多く、利率がわずか1パーセント程度の違いでも、金額が大きく借入期間も長いため、返済総額は大きく異なってきます。そこで、気になる金融機関がある場合には、不動産会社と相談して予備審査に加えてもらうか、自分で直接審査を受けることもできます。予備審査を受けたからといって、必ずそこで借りなければいけないわけではありません。予備審査に通ったところから、借り入れ先を最終決定します。

 まれに予備審査は通っても本審査で減額されたり、融資を断られたりすることもあります。その場合は、売買契約書に「ローン特約」が記載されていれば違約金なしで売買契約を解除できます。

売買代金の決済および所有権移転登記の確認

 住宅ローンの審査に通ると、融資が実行されるのに併せて「残金決済」が行なわれます。借入全額がいったん買い主の口座に振り込まれ、その後、購入代金の残金と固定資産税の買い主負担分が売り主側の口座に振り替えられます。また仲介手数料の残金が不動産会社に振り替えられます。

 この手続きは融資先の金融機関に売り主・買い主・不動産会社・司法書士が集まり、金融機関の担当者のもと、通帳を確認して行なわれます。すべての決済が完了すると買い主に権利が移ることになります。その後、同席した司法書士が登記の変更に向かい、1週間程度で、買い主のもとに新たな登記簿が郵送されます。

 その登記簿には物件の履歴や所有者、権利関係の情報が記されています。重要事項説明の際にも、登記簿の写し(最近は「登記事項証明書」と呼びます)が渡されますが、契約直前になるのが一般的です。渡された登記簿が最新の記載になっているか、事前に管轄の法務局に出向き、自分の目で確認しましょう。

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この記事を書いた人

株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント

宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。

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