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住宅ローンの賢い返済方法(4)

繰り上げ返済にはふたつのタイプがある

牧野寿和牧野寿和

2016/01/04

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繰り上げ返済は元金を返すもの

 住宅ローンを組むと、金額やプランにかかわらず、契約によって決められた形で返済をしていくわけですが、手元のお金に余裕があれば、それで住宅ローンを前倒しで払ってしまうこともできます。それが繰り上げ返済です。

 いずれ払うことになるならいつ払っても同じというわけではありません。賢く使えば、この制度はとても有利になる可能性があります。なぜなら、繰り上げ返済とは「元金」を返すものだからです。

 住宅ローン返済時に支払うことになるのは元金だけではありません。その元金と、金利によってできた利息も払わなければいけません。そこで繰り上げ返済を使って元金を減らすと、「その減ったぶんの元金に金利がかかって発生したはずの利息」が発生しないので、返済する金額が少なくなるのです。

 ただし、家計をいちばん安定させるためのローンの基本的な考え方は、低金利で借りて長期で返すことです。ですから、繰り上げ返済をするのは、あくまでも手元のお金に余裕がある場合、手元のお金を返済にあててしまっても、いざというときの手当てや将来への貯蓄に支障のない場合にしておくことをおすすめします。

繰り上げ返済にはふたつのタイプがある

 繰り上げ返済にはふたつのタイプがあります。

 ひとつは、一度に返済する金額はほぼ変わらないものの、本来30年で組んでいたローンを29年で完済する、という具合に返済の期間を短くする「期間短縮型」です。「一般的に定年とされている60歳を過ぎても返済が残るプランでローンを組んだけれど、やはり考え直して、定年後はローンを残さないようにしたい」という方は、期間短縮型の繰り上げ返済が合うでしょう。

 もうひとつは、返済期間は変わりませんが、一度に返済する額が少なくなる「返済額軽減型」です。「想定していたより子どもの教育費がかかってしまう」など、毎月返済額の負担を大きく感じるようになったら、返済額軽減型を選んで一度の支払い額を減らすといいでしょう。

それぞれの計算方法は?

 このふたつは、支払いを前倒しして元金を減らし、それに伴う利息も減らすという点は共通しています。しかし、繰り上げ返済の分をどう計算するかという点に違いがあるので、少なくなる利息も変わってきます。

 まず「期間短縮型」について。たとえば、住宅ローンが1000万円残っているときに、300万円繰り上げ返済をしたとしましょう。本来なら1000万円すべてに発生した利息を返済していかなければならないところですが、「期間短縮型」の繰り上げ返済によって元金が300万円減っているため、700万円に発生する利息を返せばよいということになります。そして、これまでと同じ金額の支払いをその後も毎月続けることで、残った元金と利息を、最初に決めた期間よりも短い期間で返済してしまおうというものです。

 次に「返済額軽減型」について。前述の「期間短縮型」は、ローンの残高を減らして発生する利息も減らすというものでしたが、「返済額軽減型」は「一度の支払い額の一部先払い」といえます。

「繰り上げ返済をした金額を残っている期間で割ったもの」が一度あたりの支払いにあてられます。これは先ほどお話しした通り元金にあてられるので、その分の利息を負担しないですみます。こうして軽くなった負担を、返済期間は変えずに払うことで一度の支払い額を軽減できるのです。

 後の項目でも引き続き、繰り上げ返済の特徴を説明していきます。家計を安定させるためには、住宅ローンは低金利で借りて長期で返すことが原則ですので、基本的には繰り上げ返済はおすすめしません。ですが、資金に余裕のある場合など、繰り上げ返済をしても問題ないケースもあります。しっかりとシミュレーションをして、よりよい選択をしたいですね。

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この記事を書いた人

CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士

1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。

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