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アパマンのライフサイクルで考える空室対策

老朽化物件でも入居者をつかむ方法はある

尾嶋健信尾嶋健信

2016/01/04

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築年数の経過のよって変わる人気度

 アパートとマンション(アパマン)のライフサイクルを、35年くらいで一生を終えるという仮定で見ていきましょう。

 事業収支計画からアパマンの一生を見ると、築年数が経過するとともに空室率が増え、賃料が下がります。そのため、売上高は築年数に比例して下がっていきます。

 しかし、物件の人気というのは事業収支計画とは違うグラフを描きます。賃貸業界には「新築マジック」という言葉があるのですが、これはニーズに合っていない物件だとしても「新築」というだけで入居者が決まってしまう現象のことです。

 ですが、その人気も築年数とともに右肩下がり、築6~30年まで年を経るごとに下降していきます。ところが、築30年を超える老朽化した賃貸物件は、入居者の属性や家賃などの条件をある程度緩和することで、それまでとは違った層の入居者を呼び込むことができます。

老朽化物件の人気を取り戻す方法

 それでは、アパマンを商品として見てみるとどうなるでしょうか?アパマンには「新築・築浅(~築5年)」「築古(築6~30年)」「老朽化(築30年~)」という3つのカテゴリーがあるのですが、それぞれ違う商品価値があります。

 新築・築浅物件については、かつては築10年までの物件を指しましたが、現在は築5年までの物件という意味合いで使われています。築2年までは人気が維持できますが、3~4年経つと、物件の価値・人気が目減りしていきます。

 築古物件では、新たな切り口で商品アイデアを企画し、人気を取り戻していく必要が出てきます。新築・築浅では強気の賃料や募集条件を設定していた場合は、新たな手を打ちましょう。簡単にできる方法は、初期費用の減額や家賃を安くすることなどがあります。

 そして、物件の人気度で見ても人気を回復できる傾向にある老朽化物件ですが、多額の投資をして大幅にリフォームをするという方法のほかに、初期費用を下げて間口を大きく広げて募集することで入居者を増やす方法があります。具体的には、高齢者や外国籍の方々などの取り込みを図るというものです。この方法ですとあまり費用がかかりませんし、一度入居者が決まるとずっと満室続きになるという傾向もあります。

賃貸市場でのポジションを知る

 最後にあなたの所有している賃貸物件が、市場においてどのようなポジションにあるのかを見てみましょう。

 新築・築浅、築古、老朽化という3つの商品ゾーンのどこに位置し、どれくらいの商品価値を把握することでさまざまな施策を打てるようになります。

 たとえば、あなたが築15年のアパートの大家さんだとしましょう。入居者をつけるのがむずかしく感じてくる頃ですが、築古物件は賃貸市場において、いちばんのボリュームゾーンに当たりますので、あなたの物件が埋もれている可能性があります。

 そのなかで、どのようにあなたの物件を注目してもらえるのか、そして選んでもらえるのかにフォーカスを当ててみましょう。

 同じエリアのライバル物件の募集条件は? ほかのエリアのライバル物件はどのような物件なのか? 築15年のアパートにはどのような募集条件が考えられるだろうか?

 このような調査を行なうなかで募集条件を試行錯誤し、「賃貸市場によくある中古物件」から「比較的新しい老朽化物件」というポジションで勝負したほうがいいという判断などができるようになります。

 このように、自分の賃貸物件をどのようなポジションに置くかのアプローチや結論づけにはさまざまな方法がありますが、その答えを導き出すために大切なのは、自分の物件が現在の市場においてどのポジションにあり、空室を埋めるためにはどのような施策が必要なのかを、俯瞰的視点で検討することが必要なのです。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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