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農的な暮らしをしてみたい!そんな移住に必要な情報源あれこれ

馬場未織馬場未織

2016/01/04

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農地は余っているのに借りられない…

 コンクリートに囲まれた生活をしていると、ときどき無性に土の匂いをかぎたくなりませんか?

 いま、地に足のついた農的な暮らしに憧れる人が増えています。「家庭菜園」というと、以前なら中高年の趣味というイメージがあったかもしれませんが、近ごろでは若い人にも人気です。まったく「畑違い」の業種から、新規就農をめざす人も少なくありません。

 日本全国いたるところで、耕作放棄地がどんどん増えています。現在およそ40万ヘクタールと滋賀県の総面積に匹敵するほどの広さです。農家の高齢化が進み、後継者が足りないことが主な原因です。

 農業に関心をもつ人がいる一方で、こんなにも多くの農地が余っているなら、その土地を安く貸してくれればいいのに、と言いたくなりますが、先祖代々引き継いできた土地を、どこの誰ともわからない人に、そうそう簡単に貸したりできないのが、農村部の習慣です。

週末家庭菜園にオススメのクラインガルテン

 極端な話、都市部に住んでいても、自治体などが運営する市民農園を借りれば、農的な暮らしへの欲求はある程度満たせるかもしれません。しかし、小鳥のさえずりで目を覚まし、窓をあけると緑豊かな景色が目に入り、軒先からすぐそこで、たわわに実った新鮮な野菜を収穫する、などという暮らしは、やはり都会ではなかなか実現できません。

 週末だけでもそんな暮らしをしてみたい!という人にオススメなのが「クラインガルテン」です。クラインガルテンとは「小さな庭」を意味するドイツ語で、もともとドイツで盛んな農地の賃借制度です。

 これが都市部でもよくある「市民農園」と違うのは、各区画にラウベと呼ばれる小屋(家)がついていて、日帰りではなく、滞在しながら農作業を楽しむことができる点です。そのため「滞在型市民農園」とも呼ばれます。

 クラインガルテンは全国にあります。ラウベは水道や電気などのライフラインは整っていることが多く、ごく普通に生活ができます。料金や利用規定などは場所によってまちまちですが、年会費は概ね30~70万円程度(光熱水費別)、1年単位の更新で数年間は連続で借りられることが多いようです。

 デュアルライフ(二地域居住)の実現には、住居費が2カ所分かかることで二の足を踏む人もいるでしょう。でも、仮に年会費が50万円であれば、月々の「家賃」は4万円ちょっと。日ごろの娯楽費や交際費を少し見直せば、あまりムリのない額ではないでしょうか。もちろん敷金・礼金は要りません(場所によっては入会金が必要な場合もあります)。デュアルライフの住宅が確保できるならトライしてみる価値があるでしょう。

 利用者同士の交流を促すため、定期的に収穫祭を開いたり、1カ月に最低5日程度は滞在することを条件にしている場所もあります。週末しか利用しない場合でも、これならご近所づきあいを楽しめるでしょう。

 なかには、その土地が気に入りクラインガルテン満期終了後に本格的に拠点をもつ、といった形でステップアップをする人もいます。
申し込み時期が決まっていたり、空きが出ない年もあるのが少々ネックです。「クラインガルテン」で検索すれば、いろいろな情報が出てきますから、ぜひ調べてみてください。

ガッツリ就農したいなら求人サイトが便利

 本気で農業を目的に移住を考えているなら、仕事ありきで探すのがオススメ。「農業 求人」などで検索すると、農業など一次産業に特化した求人サイトがいくつも見つかるので、まずはのぞいてみましょう。

 農家はどこも人手不足のため、未経験者歓迎のところも多くあります。求人スタイルはさまざまですが、近ごろは企業が農業に参入しやすくなったこともあり、ごくふつうに一般企業の求人と同じように考えられるケースも増えています。必ずしも「農家に弟子入り」ではありません。

 寮や社宅が完備されていることもあり、とりあえず住宅面での心配もありません。また、親しくなった農家さんから空き家や借家を斡旋してもらうこともままあります。さらに耕作地(といっても、勤務先が所有もしくは借りている土地です)と仕事まで一気に3点セットで手に入るのはかなりオトクです。

 いきなり転職までは考えにくい場合は、期間限定の仕事から試してみる手もあります。農作業には繁忙期と農閑期がありますから、忙しい収穫期だけ人出が欲しいという求人も多いのです。要はアルバイトなのですが、三食お給料つきで移住&農ライフを試せると思えば、実においしい機会です。ただし、現在の勤務先にアルバイト禁止の規定がないか、よくよくご注意を!

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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