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羽田線大幅値下げが狼煙を上げた京浜急行の皮算用

成田-羽田-横浜・カジノを一気通貫!?

2020/01/18 浅野夏紀

文/浅野夏紀

羽田空港線の運賃値下げで、ライバル引き離し作戦

羽田空港線値下げで京浜急行は快走中?

成田空港から羽田空港まで乗り入れる京浜急行電鉄は2019年10月から羽田空港行きの運賃を引き下げ、私鉄業界を驚かせた。これまで空港に乗り入れていた空港線の運賃は、建設費として基本運賃のほか170円分の加算運賃を加えてきた。だがその加算額一気に120円も引き下げたのだ。この結果、品川―羽田空港国内線ターミナルの運賃は410円だが、現在は300円になった。

そんな京急のドル箱路線の羽田線には、2029年にも強力なライバルが現れる予定だ。

それは品川操車場跡地を大規模再開発して、旧京急本社近くに2020年に山手線新駅の「高輪ゲートウェイ駅」を開業させるJR東日本である。

JRはさらに羽田空港の国内線第1ターミナルと第2ターミナルの間に建設する予定の羽田空港新駅から東京貨物ターミナルの付近までの数キロの空港アクセス新線を既存の引き込み線も利用して建設する計画だ。これにより、羽田空港と東京駅間を乗り換えなしで、20分弱で結ぶことが可能になる。

そこからさらに既存線を使って新宿方面へ出る東山手ルート延伸案、大井町駅への西山手ルート延伸案、東京テレポート駅への臨海部ルート延伸案の建設案を温めている。将来的には羽田空港新駅から国際線ターミナルへの延伸も考えるというのだ。

都心と羽田空港を結ぶ交通としては東京モノレールがあるが、羽田―浜松町間が30分前後で、料金は492円。リムジンバスは羽田―品川周辺のホテルで730円かかる。

 一方、京急の長年ライバルでJR東日本の子会社となった東京モノレールも巻き返しに出ている。2019年秋から定期券の運賃を最大で約24%も引き下げた。この結果、モノレール浜松町駅から羽田空港第2ビル駅までの通勤定期は月1万5000円程度から、約1万1300円に引き下げられた。

JR東日本が2002年にリストラ中の日立グループから買収したモノレールと、1998年に念願の羽田空港に乗り入れた京急はすでに20年以上も激しいシェア争いを繰り広げてきたライバル。

そんな両社のシェアを見ると、2017年度の空港の駅での1日あたりの乗降数では京急はモノレールより5割も多い。また、最近の首都圏と羽田空港を結ぶ交通網の乗客数シェアでは、京急がトップシェアの32%で、バス(25%)やモノレール(23%)をやはり圧倒している。

成田-羽田直通で利用者を囲い込みで巻き返しに

一歩リードする京急は全国の主要空港に京急線の乗車券を売り、CM攻勢をかけた。成田からも羽田からも訪日客が多い、浅草には2018年来、京急はインバウンド向け宿泊施設を設けている。京急は都営浅草線や京成線などと相互乗り入れしており、成田と羽田を使う観光客を、鉄道利用者として囲い込んできたのだ。

現段階では羽田に降りた観光客が都心に向かう電車の路線はモノレールか京急線かしかない。JRの空港アクセス線ができる前に京急は羽田客を固定ファンにしたい。

とはいえ、建設中の空港アクセス線ができれば、JR東日本は東京モノレールを沿線の住民の路線バス、路面電車のようなサービスに転換にする選択肢もあるとされる。そうなっても、京浜湾岸部の下町を走る京急には、大きな脅威となる。

羽田空港は年間8千万人以上が利用する日本最大のメガ空港だ。

しかしながら、京急は「空港こそが多様化する鉄道事業の源泉」と気づくまでにはやや時間がかかった。それでも、成田空港をドル箱とする千葉の京成電鉄が本社を東京から千葉に移転した事例などを研究してきた。

そもそも京急は戦後、三浦半島などの住宅開発(鉄道利用者増)を前提に、久里浜線の延伸を長く温めてきた。だが、思うように人口は増えず、三浦半島に住み着いた東京への通勤者は横浜市を通り越して、沿線外の川崎市や都内に引っ越し、都心へと回帰。さらに東日本震災による横浜市の液状化で、これまでの高級住宅地イメージの悪化し、その影響が尾を引いた。

「国際型私鉄ビジネス」が次の一手

横浜に移転した京急の本社。写真のように自社線ではなく「みなとみらい線」直結だ 

こうした厳しいなかで京急は、赤字決算も経験して塩漬けとも言われた宅地の評価損を吐き出して、「国際型私鉄ビジネス」に舵を切った。

その舞台は羽田だけではない。京急は長く、京急線の起点の品川駅一帯を本社・本丸にしていたが、JRの品川駅の操車場跡地の再開発が絡む区画整理などが相次いだことから、京急一家は“都心から横浜方面行きの下り電車に乗る”覚悟を決めた。京急は、地歩を横浜に移し、今後はそれを強みにして、人口低迷に見舞われる横浜、横須賀、三浦などの弱みをカバーする戦略に切り替えようというわけだ。

品川の本社関連用地を区画整理事業で多くを手放して、横浜市の「新高島」の駅前にタワービルを建設。2019年秋に移転して10社前後の関連会社を集約した。品川本社に通っていた1800人のうち大半がすでに横浜本社に通い、IR(統合型リゾート施設/カジノ)関連ビジネスも狙える観光などグループ企業と一体となっている。
(写真:京急本社ビル入れる)

ただ新高島駅は、東急系ともみなされている「みなとみらい線」(新線)の駅であり、京急の沿線の駅前でない。これについては、鉄道関係者も首をひねる珍事だった。しかし、こうしたことにとらわれていない。

京急の原田一之社長はIRの横浜誘致で経済界の代表として旗を降る横浜商工会議所のIR作業部会の座長となり、「国際型私鉄ビジネス」をばく進中なのだ。

実は公益上場企業(東証1部)で最初にIR専門の部署を置いたのも京急だった。

平和島競艇場を運営しているのも京急グループで、ギャンブルは未経験ではない。こうしたこともあって、民鉄協など私鉄関係者は「東京都並みに力のあるJR東日本が幅を利かす品川駅周辺の再開発の波にもまれて『ついに京急が都落ちした』という見方は誤りでは?」という声があるほどだ。

確かに、京急は、横浜とカジノ誘致を水面下で競った東京・お台場の高級ホテル「ホテル・グランパシフィック・メリディアン」(現・グランドニッコー東京 台場)を売り払ってまで、横浜の開発資金を厚くした。狙いは本社を横浜に移して、近くの山下ふ頭が候補に挙がるIR施設に関係するビジネスで先行すること。IRに必須のホテルや輸送事業は京急の本業の一部となっている。

IRの開設地が山下公園先の山下ふ頭になれば、そこまで鉄道を伸ばす計画もある。横浜駅と羽田空港、他社線を経由して成田空港にまで乗り入れる京急にしてみれば、ぜひ関与したい新線だが、横浜駅から元町・中華街までみなとみらい線を引いた東急などはどう出るのかは、これからの見どころだ。

広い軌道(線路)で他の私鉄より高速の輸送を誇る京急は、IRなどの新しい動きにも軽快な動きを見せてきた。

これまで水着ファッションショーを開催するほか、他社では考えないイベント列車も走らせて話題となった京急。そのうち、カジノ直行の電車も走らせることになるのか?

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