連載・トピックス / 不動産投資

この夏にも決定? 相続時の不動産登記義務化

逃げられない「登録免許税」、はじまるか「登記バブル」

2020/02/12 浅野夏紀

文/浅野夏紀

「強制化が必要」と声をそろえる国交省と法務省

画像/123RF

高齢化時代に増え続ける所有者が不明のまま放置される土地を増やさないため、新たな法整備を検討している国の法制審議会(法相の諮問機関)は、相続時の登記を義務化し、違反者に罰則を科すことなどを盛り込んだ中間試案をまとめている。

民法や不動産登記法の改正についての検討を進め、民事基本法制も見直す。
具体的には、相続登記申請を土地所有者に義務付けることや申請者の負担軽減を図ることで、不動産登記情報の更新を図る、遺産分割の期間制限を設けるなど、所有者不明土地の発生を予防するための仕組みを法律で縛る方針だ。

すでに制定された「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」だけでは不十分という判断だ。法務省はパブリックコメントの募集を経て、近く最終法案をつくる。その原案によると、所有者不明地の増加を抑えようと、相続時登記を原則義務にする。これが「相続登記バブル」を呼ぶかもしれない。
登記のために隣地との係争がありそうな価値ある土地は費用のかかる測量も欠かせないことが多いからだ。
最終報告はこの夏にまとまる予定で、法務省は追って臨時国会に民法や不動産登記法の改正案を提出する方向のようだ。

任意制度の登記にこうした強制措置が必要な理由として、国交省や法務省の関係者はいくつもの理由を上げてきた。「未登記の土地は公共事業の用地買収、災害の復旧事業の妨げになる」、「民間でも土地の売買に現在の制度の下では、所有者の探索に多大な時間とコストを要する、自治体による筆界特定制度の新たな活用策を導入する」等々だ。
実は任意制度である登記については、伴い発生する登録免許税の支払いを嫌って、未登記のままにする事例は民間のビルなど収益不動産にも珍しくない。これが実態だが、相続の場合の登記関連の税金(固定資産評価額の0.4%)は減るのかも焦点だ。

馬鹿にならない登録免許税と司法書士への依頼費用

田畑の場合でも、現在の隣地の所有者の立ち合いも必要だが、死亡や引っ越し、転売で所有者が見つからない場合は少なくない。しかし、現実には,過疎化(人口減少)、高齢化と少産多死の時代迎える中、地方には登記されていない山林や田畑、宅地が隠れている。加えて、高齢な所有者は病気や認知症で施設に入ることも考えないといけない。

過疎地においては、すでに荒れ放題で境界も所有者もわからない隣地をどう扱うのか。登記が義務づけられれば、相続放棄の土地は増える可能性がある。
司法書士や土地家屋調査士の相談会では「親族の遺産に北海道の原野がありそうだ」、「遺産に山があるそうだが、役場に聞いてもその場所も境界もとても特定できない」「だから処分できない」という話が数多く聞かれる。

山林は登記されていたとしても、所有者が亡くなった後、相続すると、法務局での名義変更が必要だが、それすらしていない事例も少なくない。名義変更には、戸籍など提出する書類もあり、手続きが非常に面倒で、時間もかかるかからだ。現状では、固定資産評価額の0.4%の登免税もかかり、手続きを司法書士などに依頼する費用もばかにならない。

法務局には不動産登記簿があり、市区町村には住民基本台帳、戸籍、固定資産課税台帳がある。不明土地所有者割り出しの情報がこれだけの情報があるのに、国と自治体の違いなど縦割り行政の弊害で生かし切れてこなかった。これまでも京都府精華町や富山県南砺市など死亡時に相続登記を呼びかけ、登記率が上がった自治体もあるが、それもごくわずかにとどまっている。

その理由は何か――
ある市町村の戸籍係は「本当は死亡届が出た時が相続登記の好機です。でも顔見知りも多くそうは言えません」という地方ならではの横たわる事情を話す。
さらに行政側にはもっと問題は多い。地籍調査は日本では面積の5割は達成されているというが、面積的には国・公有林など森林が多く、例えば、都内の下町の密集市街地ではわずかだ、といわれる。

さて、相続登記義務化の原点の1つとなった「都市伝説」にも触れておこう。
「所有者不明の土地が九州の面積より大きい」というニュースを覚えている方もいると思う。「九州を超える面積」については、登記情報と現在の所有者、その住所が完全に一致しない事例を最大限に推測した「膨らませたデータ」というが、不動産取引のプロの常識だ。
もっともそれを言い出したのは旧建設省の官僚で岩手県知事や総務大臣を務めた増田寛也氏(現在は日本郵政社長)だ。

実家の土地を相続する場合、子どもの世代(とはいえ高齢者が中心)はすでに都市部のマンション住民となり、故郷を離れていることが多い。団塊の世代やその前後の生まれの住民で決まって話題になるのは、「実家の田舎の土地や山林も境界どころかどこにあるかどうかも知らない」という話だ。
団塊の世代が75歳を超え、これから平均寿命の迎え鬼籍に入る人が増える。この世代の多くも全国から首都圏や京阪神から移住しており、故郷の田舎の土地の相続期も迎えたが、自宅を有する都会でも相続登記の厳格化は大変なことになる。そんななか19年末から都内のマンションに法務局から気になる通知が相次いで届いている。

その通知には、法務局に備え付けの「公図」(地図に準じる図面)は土地の境界(筆界)が不正確なものが多い状況にあり、「東京法務局にて1筆ごとの確認と正確な測量を行った結果、あなたのマンションの土地面積は、公図の面積より〇〇減少(あるいは増加)することになりました」という内容がしるされている。
これを根拠に登記の修正に同意を求められ、マンション住民の管理組合総会での決議を促されるのだ。

法務省の登記情報と自治体の戸籍情報の連動、登記の際に必要な登録免許税の死亡相続の際の引き下げや、遅れた場合の懲罰的引き上げといった案が法曹界、測量士会、司法書士会から出ている。
こうしたなかでの、降ってわいたような相続登記義務化の激流に、国の後押しで、専門家としての需要が増えそうな測量士や行政書士の業界は歓迎者が多い。

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