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掃除も立派な修行

年末の大掃除はどのようにはじまったのか?(1/2ページ)

正木 晃正木 晃

2019/12/01

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イメージ/123RF

年末の掃除は12月13日に行うのが基本?

年末といえば、大掃除の季節である。なぜ、年末になると大掃除をするのか。一説には、一年分の汚れをはらい清め、新年に歳神を迎える準備として、大掃除が行われてきたという。

もっとも、大掃除という表現はさして古くはない。かつては煤(すす)払いと呼ばれてきた。今でも、お寺や神社では、煤払いと称されて、年末恒例の行事となっている。もともと煤払いは旧暦の12月13日に行われていた。この日は「正月事始(しょうがつことはじめ)」、つまり正月を迎える準備を始める日でもあり、門松や雑煮を炊くための薪をはじめ、正月に必要な木を山へ取りに行く習慣もあった。

なぜ、12月13日だったのかというと、江戸時代の中期ころまで使われていた宣明暦(せんみようれき)では、この日を二十七宿(占星術の一種)にあてはめると必ず「鬼」になっていたからだ。「鬼」の日は婚礼以外はすべてに吉とされているので、正月の年神様を迎えるのに良いとみなされていたのである。

その後、貞享(じようきよう)2年(1685)に江戸幕府天文方の渋川春海(しぶかわはるみ)によって暦が改訂されると、日付と二十七宿は同期しなくなった。しかし、旧来からの習俗は変わることなく、正月事始の日付は12月13日のままとなった。

煤払いが12月13日だった理由は、ほかにもあった。商家などの奉公人が正月までに故郷に帰れるようにという配慮から、この日が選ばれたらしい。13日なら、年末までに2週間以上あるから、かなり長い旅程であっても、帰り着くだろうという計算である。

仏教界で煤払いといえば、「御身拭(おみぬぐ)い」がある。ご本尊の埃や塵を払うことからはじまって、箒(ほうき)やたたきではとても届かない建物の高所を、先端に笹の葉をくくりつけた長い竹竿ではらい清める。

多くのお寺や神社ではやはり年末に行われてきたが、最も有名な東大寺の「御身拭い」は、年末ではなく、まだ暑い盛りの8月7日に行われている。ただし、毎年の8月7日に行われることになったのは、昭和39年(1964)からで、それ以前は毎年ではなく、東大寺の別当(住職にあたる役職)の任期中に一回くらいしか行われなかった。ということは、せいぜい数年に一度にすぎなかったことになる。

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この記事を書いた人

宗教学者

1953年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本・チベット密教)。特に修行における心身変容や図像表現を研究。主著に『お坊さんのための「仏教入門」』『あなたの知らない「仏教」入門』『現代日本語訳 法華経』『現代日本語訳 日蓮の立正安国論』『再興! 日本仏教』『カラーリング・マンダラ』『現代日本語訳空海の秘蔵宝鑰』(いずれも春秋社)、『密教』(講談社)、『マンダラとは何か』(NHK出版)など多数。

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