連載・トピックス / 不動産投資

弱者が強者に勝つ

ランチェスター式賃貸経営

2019/11/05 住まいの大学

取材・文/ウチコミ!タイムズ編集部 

ランチェスターを 賃貸経営に応用

夏山栄敏(なつやま まさとし) ドリームクロス合同会社 代表、特定非営利活動法人ランチェスター協会 常務理事。大手製薬会社の営業でトップランクとなり、入社5年後ジョージワシントン大学 経営大学院に 留学しMBAを取得。帰国後、マーケティング部・研修部の部長を経て経営コンサルタントとして独立。 現在は14棟126戸を所有する賃貸住宅オーナーでもある。

「ランチェスターの法則」をご存知だろうか。1941年に自動車工学・航空工学のエンジニアであるフレデリック・ウィリアム・ランチェスター(英・1868年10月23日〜1946年3月8日)が近代戦争における空軍力の重要性を説いた法則である。

分類すると「第一法則(一次法則)」と「第二法則(二次法則)」があり、第一法則は原始的な剣や弓などを用いた1対1の局地戦では武器効率×兵力数がそのまま戦闘力となり、第二法則では近代的なマシンガンや戦車・飛行機を用いた広域戦においての戦闘力は武器効率×(兵力数二乗)になるという法則をあらわしたものである。とくに第二法則の第2次世界大戦における「硫黄島の戦い」においてJ.H.エンゲルにより分析され、この法則が成り立つことが証明されたといわれている。

戦後、経営コンサルタントの田岡信夫はランチェスターの法則を経営戦略に応用したことから「ランチェスター経営戦略」として多くの企業に採用、活用された。そして今日にいたるまで、ランチェスターのエッセンスでもある弱者が強者に勝つための戦略、もしくは強者が弱者を封じ込める戦略というのはあらゆる企業に浸透している。

『投資オンチでもできた 弱者逆転の「ランチェスター式 不動産投資成功術」』 著者:夏山栄敏 発行:セルバ出版 発売:創英社/三省堂書店 定価:1700円+税

そして今年8月、『投資オンチでもできた 弱者逆転の「ランチェスター式 不動産投資成功術」』を上梓したのが夏山栄敏オーナーである。戦略バイブルでもあるこの古典をモチーフに、なぜこのような本を世に出したのだろうか。
 
「以前、私が製薬会社のマーケティングをやっていたとき、ランチェスターの法則を活用していたんですね。そして営業研修の部長を務めていた際、このランチェスターの法則を営業研修でセールマンに教えていたのです。その傍ら賃貸経営を始めたこともあり、教えるだけじゃなくて賃貸経営で実践するようになりました。そんな感じで12年間くらいやって今日にいたるわけですが、最初はいろいろ苦労しましたね。でも失敗を重ねながらも14棟126戸の状態にまですることができたのは、ランチェスターをベースに取り組んできたからだと思います。このような考え方を応用した賃貸経営本とういうのは世の中にあまりないし、私自身のライフワークということもあって形に残したいという思いもあり出版しました」と夏山オーナーは話す。

弱者が成功者の 真似をしてはダメ

では夏山オーナーにとって、賃貸経営におけるランチェスター経営戦略とはどのようなものなのか。夏山オーナーはこう話す。

「賃貸経営にはデシジョンメイキング、つまり意思決定が重要で、そのベースとなるのがランチェスターです。ランチェスターにおいて、強者はシェア1位を意味し、それ以外は弱者。弱者の戦略は差別化戦略でいかに独自性を出すか。強者は何をやっても勝てるのでミート(弱者の差別化戦略を打ち消すモノマネ)戦略をとる。一般的には、人は成功している人のやり方を真似したがるものです。でもそれをやったら負けてしまう。成功している人は相場がいいときに買っている。しかし、いまはそういう時代ではありません。空き家が増えて、新築アパートも建っている。このような熾烈な市場でどう戦うべきか。だからこそ、弱者がとるべき戦略は差別化戦略であり、私自身も弱者であることを認識したうえで取り組んでいます」

見捨てられていた 築50年の物件を再生

左/『クロスコート向ヶ丘』改修前 右/改修後

夏山オーナーがみずからを弱者として認識し、その差別化戦略を目に見えるカタチで具現化した物件がある。小田急線「向ヶ丘遊園」駅から徒歩9分のところにある『クロスコート向ヶ丘』(神奈川県川崎市多摩区)だ。この物件には夏山オーナーの「デシジョンメイキング」を思う存分に感じることができる。どのようにしてこの物件をプロデュースしたのだろうか。

『クロスコート向ヶ丘』バーベキュースペースと内観イメージ/写真提供 夏山栄敏

「ここは見捨てられていた物件です。築50年で融資も付きづらい。だからこそよかったのです。この物件は路線価上では1億2000万円なのですが、基礎などの問題もあり、誰も手を出さないことから3,000万円で購入することができました。しかし購入後の改修には3500万円程度と、当初想定していた改修金額より大幅にオーバーしてしまいましたね(笑)。コンセプトは下宿とシェアハウスと通常のアパートをミックスした感じの“民泊”といったイメージです」(夏山オーナー)

『クロスコート向ヶ丘』で提供される料理の献立

『クロスコート向ヶ丘』の特徴はなんといっても料理人と管理人がいることだ。
入居者は朝食を200円、夕食を500円で食べることができ、必要によってはお弁当も作ってくれるという。入居者からするとこれほど嬉しいサービスはないだろう。若い人であれば外食も多く、栄養も偏りがちだ。『クロスコート向ヶ丘』で提供されるのは、日本料理の経験もあり、大手自動車メーカーの社員寮の調理師としても活躍していた“ノブくん”が作る栄養バランスのとれた食事なので安心だ。そして何かあったときは“管理人である“ハルミちゃん”が助けてくれる。これほどの特徴をもった物件であれば人気ですぐに埋まるだろう。

「じつはものすごく苦戦しました。この『クロスコート向ヶ丘』は2018年の1月に空き家の状態で購入したのですが、改修工事に入ったのは同年の3月で、段階的にリフォームを終えた部屋から普通のアパートとして順次募集を開始したのです。そして年末にいまのシェアハウスと下宿的なものを取り入れ、自主管理にしたのですが、結局5室しか埋まらなかった。仲介会社の方もなかかなこのような特殊な物件の魅力を内見者に伝えることができないんですよね。そうなると私がみずから物件の魅力を伝えるしかありません。『ウチコミ!』を使って成約したり、完全なシェアハウスではないのですが許可を得て、シェアハウス専門の『ひつじ不動産』で募集したところ成約が加速していきました。現在は満室で空室待ちの方が2名ほどいます。募集した当初は3万5000円程度の家賃でAD2ヵ月、フリーレント1ヵ月付けても人が来なかったのですが、いまでは家賃を約5万円にして満室になっているので、ランチェスターの弱者の戦略である『差別化』が功をそうしたのです」(夏山オーナー)

まさに弱者逆転のランチェスター式 不動産投資成功術を体現した『クロスコート向ヶ丘』。じつはこの物件にはネパール・ベトナム・中国・台湾・韓国、そして日本とさまざまな国籍の人が住んでいて、『クロスコート向ヶ丘』そのものが国際交流の場になっている。戦争における数理モデルである「ランチェスターの法則」とは裏腹に、そこには賃貸住宅の心暖まる新たなハーモニーが芽生えていた。

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