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『ブラタモリ』白金編1

「伝説」を考えさせられた時空の亀裂と「伝説」(1/4ページ)

岡本哲志岡本哲志

2019/11/01

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図1、白金の位置とブラタモリに登場する施設

歴史は古い方から新しい時代へ流れる。それは一般的な見解だが、「本当か?」。「伝説」に関する歴史を思い起こす時、そのように疑いたくなる。伝説は「後付け」の場合が意外と多いからだ。かつてはそう言われていなかったが、都合良く、あたかも古くからそうであったかのように。その後は、全く別の歴史が遡ってはじまる。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、過去の歴史が変わると、時空に亀裂が入り、その後の地球に重大な危機が訪れるという。これはドグ博士が映画のなかで語っている理論だ。映画の主人公のマーティは「過去を変えたら危険だと言ったじゃないか」とドグ博士に詰め寄る。するとドグは「堅いこと言うなよ」と軽い言葉でかわす。いい加減だが、まさに歴史を改ざんして新たな「伝説」をつくりだす仕組みと重なるものがある。ちなみに、3作とも映画では時空を改ざんして、状況が二転三転する。歴史の改ざんを楽しむかのように。この映画、悪は改ざんを許されず、善は許される展開で終わる。限りなくアメリカ映画の王道だ。「伝説」にしてしまえば、時空に亀裂が起きないのだろうか。

2019年6月22日に『ブラタモリ』で東京・白金を取り上げ、放送された。実は私の誕生日だったのだが、それはともかく「白金はなぜシロガネーゼの街になった?」というお題で『ブラタモリ』の白金編の番組がはじまる(図1)。

タモリさんとは「ブラタモリ」の番組で白金編も含め8回案内役を務めさせていただいた。ほとんどベッタリとロケにつき合うことになった銀座編(2009年10月22日放送)は、番組で放送されない多くの時間で会話が弾んだ。ただ、テレビ的でない会話はカットされた。個人的には大変面白い対話だったのだが、テレビは視聴者を強く意識してつくられる。それが本当かどうかは別として、一般化されない会話はカットされる。

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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