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まちと住まいの空間 第16回【ブラタモリ/白金編その2】

旧朝香宮邸から読み取る白金が高級住宅地になった理由(1/5ページ)

岡本哲志岡本哲志

2019/12/04

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高級住宅地となる条件とは何か

NHKの人気番組ブラタモリは、視聴者を引きつけるお題目が用意される。

2019年6月22日に放送された『ブラタモリ』白金編では、「なぜ白金はシロガネーゼになったのか」だった。30代の子育て世代の主婦がファッショナブルなイタリア高級ブランドに身を包み、外車に乗り、血統書付子犬を白金の街で散歩させる。白金の高級住宅地を歩いていると、確かに、いかにも高そうな子犬を散歩させている人たちとよくすれ違う。

番組では「なぜ白金はシロガネーゼになったのか」を切り口にしているが、ベースにあるテーマは、高級感を漂わせる街自体の履歴、「白金がなぜ高級住宅地になったのか」である。ただ、多くの人たちは、白金の街のなりたちを知っているようで、意外と知らないのではないだろうか。皆さんは、そのことをご存じだろうか?

ブラタモリ・白金編では、「高級住宅地」が成立する条件をあげながら、一つひとつの課題をクリアーしながら、「白金がなぜ高級住宅地になったのか」を読み解くように番組が進行する。
高級住宅地になった条件は「豪邸」「緑」「高台」「治安」の4つ。これに加えて番組の最後にもう一つ加わるのだが、まずはこの4つの条件で進行していった。

私たちがよく知る高級住宅地としてイメージされる街をあげると、田園調布、成城学園がまず思い浮かぶだろうか。これらの街は、近代以降に雑木林や原野を計画的に開発整備され、高級住宅地となったものだ。それとは別に、明治期以降大規模な開発が行なわれることなく、大名屋敷の跡地が宅地化され、後に高級住宅地のイメージをつくりあけたケースがある。これこそが江戸を引き受けた東京ならでは、といえる高級住宅地である。

その一つが白金といえる。このようなエリアが高級住宅地に至には、はじめにあげた4つとブラス1の条件が重ならないと成立しない。そこでまずは「豪邸」と「緑」に絞って話を進めていこう。

次ページ ▶︎ | 危機を経て残る「豪邸」と「緑」

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この記事を書いた人

岡本哲志都市建築研究所 主宰

岡本哲志都市建築研究所 主宰。都市形成史家。1952年東京都生まれ。博士(工学)。2011年都市住宅学会賞著作賞受賞。法政大学教授、九段観光ビジネス専門学校校長を経て現職。日本各地の土地と水辺空間の調査研究を長年行ってきた。なかでも銀座、丸の内、日本橋など東京の都市形成史の調査研究を行っている。また、NHK『ブラタモリ』に出演、案内人を8回務めた。近著に『銀座を歩く 四百年の歴史体験』(講談社文庫/2017年)、『川と掘割“20の跡”を辿る江戸東京歴史散歩』(PHP新書/2017年)、『江戸→TOKYOなりたちの教科書1、2、3、4』(淡交社/2017年・2018年・2019年)、『地形から読みとく都市デザイン』(学芸出版社/2019年)がある。

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