連載・トピックス / 不動産投資

知っておきたい「基本」の心構え

台風や大雨で物件が浸水したらどうなる?

2019/12/03 住まいの大学

文/住まいの大学編集部

画像/123RF

最近(2019年秋)、集合住宅にかかわって大きな話題になったことといえば、やはり10月の台風19号による被害を一番に挙げる方がほとんどなのではないでしょうか。川崎市高津区では、浸水したマンションの1階に住む男性が亡くなりました。発見したのは救助に駆けつけたダイバーでした。


また、同じ川崎市の武蔵小杉駅周辺では、浸水被害に遭ったタワーマンションが長期にわたる停電に見舞われました。地下に設置された電気設備の冠水が原因です。復旧を待つ間、住人の中には、毎日地上40階近いところまでを階段で上り下りしなければならなくなった方もいたそうです。


そんなニュースを見聞きして、「私の物件が浸水したらどうなるんだろう」と、不安に思ったオーナーさんも大勢いらっしゃるのではないでしょうか。


台風や大雨による洪水で、物件が浸水したらどうなるのか? 法的な責任面においての「基本」を大事な心構えとして整理しておきたいと思います。


こんなケースを想定することにします。


・台風等による大雨で、川あるいは下水などが溢れ
・賃貸アパート、マンションの1階部分の各部屋が床上浸水
・入居者さんの家財にも被害が及び
・復旧まで入居者さんには一時立ち退きをしてもらうことになった


なお、


・オーナー側の普段の物件管理に、被害を誘発したり、拡大させたりするような落ち度はなかった


を付け加えます。


■建物と設備の修繕・復旧義務はもちろんオーナーにあり

床上浸水してしまったような部屋には、当然そのままでは入居者さんは暮らせません。修繕や清掃、消毒、設備の修理など、復旧が必要です。そのための費用はもちろんそれらの持ち主であるオーナーが負担しなければなりません。民法606条1項においても、「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と、定められているとおりです。賃料と引き換えに部屋を貸すオーナーは、「普通に暮らせる」状態の物件を入居者に提供する義務を負っています。


■家賃はどうなる?

物件が復旧し、住めるようになるまでの間、入居者さんが一時立ち退くことになるケースでは、当然その間の家賃を請求することはできません。賃料と引き換えにオーナーが入居者さんに提供すべき「賃貸物の使用及び収益」が不可能になるからです。法律的には民法の611条1項が、やや間接的ですが根拠となります。「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」と、いうことになっています。


■ホテル代を出してと言われたら?

そのうえで、たとえば「部屋を立ち退く間はホテルに泊まるから、ホテル代をオーナーさんが負担してください」と、入居者さんから請求があったとします。これを叶えてあげる必要はありません。入居者さんが一時立ち退くことになった原因はあくまで自然災害です。オーナーに責任はないからです。


■入居者さんの家財は誰が補償する?

部屋が浸水し、それにともなって入居者さんの私物である家具・家電などに被害が生じたとしても、オーナーに補償の義務はありません。それらは、賃貸借の対象となっている建物やそれに付随する設備とは違い、あくまで入居者さん自身が管理し、責任を負うべきものだからです。補償は、入居者さんに加入してもらっている賃貸入居者用の保険(いわゆる家財・火災保険)に委ねられることになります。


いかがでしょうか。まずは以上が基本です。


常識的に考えれば当たり前のことともいえるのですが、


・賃貸借契約の対象となっている建物や設備等 …責任の所在はオーナー
・入居者さんの私物としての家財等 …責任の所在は入居者さん


この切り分けが基本です。よって、これにもとづくかたちで、


・入居者さんは家財への補償が含まれた賃貸入居者用の保険に
・オーナーはオーナー向けの火災保険等、損害保険に


それぞれ加入するのが、現在のスタンダードなかたちとなっています。ただし、注意しておかなければいけないのは、場合によっては、入居者さんの家財、あるいはケガなどに対する補償が、オーナーの責任範囲に及んでくる可能性もあることです。


それは、単純にいうと普段の管理が悪い場合です。オーナー側に落ち度があった場合です。


例を挙げるとすれば、床上や床下よりも、建物の「上」からの浸水がわかりやすいでしょう。たとえば、入居者さんから雨漏りの指摘を事前に受けていたのに、ノロノロと対応を怠っているうちに台風が襲来、その豪雨によって入居者さんの家財に損害を与えてしまったようなケースです。


これだと、「自然災害だから不可抗力」と、オーナー側が主張して責任を免れることはかなり難しくなるでしょう。そのほか、さきほどの基本にプラスして、もうひとつぜひ知っておきたい心構えを挙げておきます。


■もう修繕はせず、この機会に賃貸経営を終わりにしたい。できる?

築古物件での被災などでは大いにありうる判断です。ですが、意外な面倒が起こる可能性もあります。なぜならば、さきほどもふれたとおり、物件が修繕可能である以上は、オーナーは「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う(民法606条)」からです。なおかつ、借地借家法の規定によって、入居者さんがその物件に住み続けたいと希望すれば、いわゆる正当事由が認められない以上は拒否することができません。オーナーは、多少の出費が痛いからといって、そう簡単には入居者さんから家をうばうわけにはいかないのです。


一方、建物を復旧させたいが、調べたところ多額な費用がかかるとわかり、経済的にとても無理と判明した、といったケースでは、その物件は、物理的には修繕可能でも経済的には不可能ということになります。上記の修繕義務から外れる可能性が高くなります。なおかつ、そのことが借地借家法における正当事由の一部、もしくは重要な部分として認められ、入居者さんに退去を願える可能性も同様に高くなることでしょう。


(文/朝倉継道 画像/123RF)



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